2015年5月16日土曜日

101回 薬剤師国家試験対策 薬の特性

≪101回薬剤師国家試験に向けての必殺攻略法2:表に隠された薬物の特性≫

 薬学メディカルスクール事務局

03-6807-1546
(am10-23 メディカルスクール事務局 年中無休)


前回は抗菌薬を例に、疾病により薬物を選択する際、何を基準にすればいいのか、それを代謝の観点から説明しました. 今回は、前回に続き動態の計算問題をとりあげます.
問題形式は、これからも国家試験の形態に拘らず、本質を問う形とします.

【問題】
 次の表はある薬物を静脈内投与したときの体内動態パラメータである. ただし、この薬物は線形1-コンパートメントモデルに従うものとし、肝血流速度は1500ml/min、クレアチニンクリアランスは120ml/min、薬物消失は主に腎、肝から起こるものとする.







「上の表からこの薬物はどのような特性を持っているか」

(解説・解答)
今回の問題は前回よりも国試に近いものにしましたが、あえて設問の内容は曖昧とすることで、諸君のこういった解析問題の取り組む姿勢を図るのがねらいです. 教えていて気になることは、“設問に答えよう”とする意識が強すぎるためか、公式に頼りすぎ少しでも公式が使えない(使えるべき値が与えられていない)とお手上げ、といった状況に陥る人が多いように思えてなりません. そういった壁を超える方法をこの問題で是非身につけて下さい.

1.CLot=ke・Vd(全身クリアランス、消失速度定数、分布容積)の3パラメータ公式.
とt1/2=0.693/ke
2.血漿タンパク結合率の大小で何が分かるか.

3.尿中未変化体排泄率で何が分かるか.

4.肝血流速度、クレアチニンクリアランスの値から何を求めることができるか.




以上のことを踏まえると・・・・
1では与えられたCLoとVdとから、ke=23(hr)
2では血漿タンパク結合率が20%と低い(非結合形薬物)ので、血漿アルブミンの影響を受けにくい(組織への移行性が大、分布容積大と表からも矛盾がない)
3.尿中未変化体排泄率5%なので腎からはほとんど消失しない(腎以外、肝などで代謝される)ので、腎機能低下患者に対し投与量を考慮する必要がない.

4.CLot、肝血流速度、尿中未変化体排泄率から肝抽出率Ehを求めると、
Eh=0.02<0.3. よって、この薬物は肝代謝律速型薬物、つまり肝血流速度の影響を受けにくい.
以上のことから、この薬物は、
「半減期が長く、体に分布しやすく、腎疾患患者にも問題なく投与でき肝で代謝される」
といった特性があるといえる. (該当する薬物にどのようなものがあるのか気になった方は等予備校に連絡下さい.
 いかがでしたか. 国試ではこの手の問題は計算問題として出題されるでしょうし、また計算が出来なければ話にならないことも事実です. しかし、まず計算が主としてあるのでなく、あくまでも薬物がどのような特性を持ったものであるかを問うていて、計算はそれの補助的なものであることを忘れてほしくないのです. 結論から言うと薬学計算はそれ程難しいものは出ません. もし、難しいと感じているとすれば、それは計算問題を
公式の暗記→数値のあてはめ
と機械的捉えているからで、そうである以上出題者はその裏を突いてくるにきまっています.
これからのこの「攻略法」で諸君達の国試に対する意識が変わっていくことを心から望みます.
話を本問に戻すと、動態の問題は薬物自身のもつ定性・定量であるので、公式を覚える
ことは勿論であるが、あくまでもそのことから投与計画に結び付けられなければ十分とはい
えません. 

次回は物理の基本、「反応速度を数学的に扱う」がテーマです.


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